今野社長に感謝を込めて・・・追悼ツーリング


今年の元旦、年賀状をめくっているといつものようにケルビムの真一さんから年賀状が届いていた。写真には僕らが社長と呼んで敬愛する仁氏が製作したメキシコ・オリンピック6位に入賞した車体。僕の大好きなデザイン・・・しかし次の瞬間に目が一点から離れなくなった。



仁氏の描いた自転車のデッサンの下に生誕を表す1940-2013の数字。えっ何で?どういうこと? 心に大きな動揺が走った。それが今野仁氏が逝去されたことを知った瞬間であった。



社長に最初にお会いしたのが1983年のこと。夜の町田街道で社会人最初のボーナスで買った土屋製作所製のエベレスト・ロードレーサーで走っていた時に、ケルビムレーシングチームのOさんに声をかけられ毎週土曜日の朝練に誘ってもらったのが出会いのきっかけだった。
それ以来、チームの遠征用にワゴン車を購入してもらったり、土曜日の朝練後に冷えたスイカや飲み物を用意してもらったり、たくさんのサポートをしていただいた。そして練習後に社長のスチールフレームの哲学を何度も聞いて、そのよさを刷り込まれていった。したがって、自転車を選ぶときにスチールフレーム以外の選択肢は僕にはない。そして新しいフレームを作るときは、まだその頃あどけない顔の小学生だった二代目の真一氏の作ったフレームである。



 
2月に名古屋に単身赴任となったときに、社長が2006年の暮れに病に倒れる直前の夏に完成したツーリング車を赴任先に持ち込んだ。そして先週末、ずいぶん遅くなってしまったがようやく社長の追悼ツーリングに出かけることができた。飯田駅に到着して自転車を組立てた。




名古屋から飯田駅まで高速バスで2時間。自宅の千葉からJRで5時間はかかることを考えると一瞬の距離である。



戦前の主要道路であった大平街道の一部となる県道8号線を飯田峠に向かってみた。平野よりも遅れて春を迎え満開になった梅や桜を眺めながら、ゆっくり登る。



街道のところどころに立っている地名が楽しい。



あちこちで咲いていたキブシの花



雪融けでできた水たまりではオタマジャクシを見つけた。



大平街道の三十三観音の一つの千手観音。道標として祀られていたが行方不明だったものは復元されており、当時のものがそのまま残っているものも多い。



飯田駅を出発したときは天気が良かったが、急にあられや雪が降り出したりする不安定な天気であった。



残念ながら冬季閉鎖中のため峠に行くことはできなかったが、早春の空の下で自転車が大好きだった社長と一緒に走っているような気配を感じながら、ちょっぴり心の整理をすることができた一日であった。

「主はケルビムに乗って飛び 風の翼をもってかけり」今野仁